制作チーム「アトリエ∞(インフィニティー)」所属、グラフィックデザイナーのwachico.(わちこ)です。
今回の「おつD」は番外編として、最近何かと良くも悪くも話題になる「画像生成AI」について取り上げてみたいと思います。う〜ん、唐突だなぁ。
AIといえば対話式AIである「ChatGPT」があまりに有名ですが、今回は「画像生成」に関する話題に絞ってお話していきますので、まずその程ご承知おき下さい。また当方の主観と個人的見解が多分に含まれるので「いやそれは違うやろ!」と言われても仕方ないわけですが…まあ今回も、ひとつの読み物として楽しんで頂ければ幸いです。
※本記事の内容は、2023年6月時点の情報を元に執筆しています。
もくじ
【画像生成AIとは?】
【AI絵師は悪なのか? AIと著作権】
【私と画像生成AIの付き合い方 3つのマナー】
【まとめ】
【画像生成AIとは?】
まず初めに、画像生成AIとは何か。個人の見解や状況によって定義はいろいろあるでしょうが、ここではざっくり「テキストやデータを入力することで、AIが自動的に画像を生成する技術」としておきます。
AIとは「人工知能」という意味。何かについて「自動的」に「学習」する技術を指します。つまりインターネットなり何なりどこかから生成元となる情報を収集・学習しておき、私たちが「テキストやデータを入力」すると、入力されたデータと学習結果を元に画像を生成する…というのが画像生成AIの仕事です。
AI…つまり「プログラム」が具体的にどのような仕組みで画像を生成しているのかは、恐らく使用するソフトウェアやアプリケーションによって違うので、ここでは深く言及しません。それこそキリがない話題ですので…。
参考記事:Photoshopの画像生成AIがすごい ついに商用利用もスタートへ(ASCII×AI 様)
※情報は2023年6月時点のものです
このように、既存の画像にさまざまな要素を足したり引いたり、ゼロから画像を描かせる(学習結果を元にしているので厳密には「ゼロから」ではないですが)という作業が簡単にできる所が、言うまでもなく画像生成AIならではの魅力です。
そんな便利なAI画像生成ですが、一方ではその「使い方」「取り扱い方」などについて度々問題になっています。色々な問題がありますが、ここでは代表的な一例を取り上げてみましょう。
【AI絵師は悪なのか? AIと著作権】
皆さんは「AI絵師」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 文字通り、自分の手で描く代わりに画像生成AIを用いる「絵師(漫画家やイラストレーターなど、イラストを描いている人)」のことです。
AIの特徴をうまく使い、美しい画像や可愛らしい画像、果ては爆笑必至な画像を生み出すAI絵師。新たなエンターテインメントとして多くの人々を楽しませていますが、残念ながら中には技術を悪用する人たちもいました。
前述通り、AIはデータを「自動」で「学習」する技術。つまり、こちらが用意した情報…手元にある画像データそのものを「意図的に」学習させる、といったこともできる訳です(この辺は使用するソフトウェアやアプリで違うかも?)。悪意あるAI絵師たちは、他人の描いたイラストを勝手にAIに学習させ、クオリティの高い画像を短時間で大量に生成したのです。
絵師たちは1枚のイラストを何時間もかけて、ひたすら心を砕いて、やっとの思いで描き上げています。それに近いものを短時間で大量に、しかも然程の苦労もなく描かれてしまっては、どうあっても創作モチベーションが保てるハズがありません…。
それだけならまだしも、生成画像を公開して自分が学習元の絵師本人であるかのように振る舞う(いわゆる「なりすまし」)・AI生成ではなく自分で描いたと嘘をつく・他作品を模倣して生成した画像を販売し金銭的利益を得る、といった身勝手な人まで出てきました。
ここで個人的に一番怖いと思ったのは、これらの問題はAI絵師が「意図せずとも」発生する可能性がある、という点です。AI側が自動的に他人の絵を学習した結果、他人の絵そっくりな画像を生成してしまったとしたら? 果たしてそれは盗作か否か?
AI絵師が予期せぬ「盗作」を生み、学習元にされた絵師から訴えられる…そんな状況も十分あり得るのです。というより、既にどこかで発生していても何らおかしくないです。誰にも悪意がなくても、自分の絵が勝手に学習元にされたり、そのイラストで(金銭の有無に関わらず)何らかの利益を得ている事実そのものが、学習元にされた絵師にとって何より耐え難いのです。
画像生成AIの抱える問題の一端は、こういった「著作権」にまつわるものだと感じます。
この著作権(著作権法)ですが、現状(2023年6月時点)では「権利者の許諾なくAIに著作物を読み込ませて学習させることができるが、著作権者の利益を不当に害する場合はこの限りでない」とただし書きがされています。しかしまだ細かな法整備までは追いついていない、とのこと。具体的な対処方法が明確にされていないため、今は当事者それぞれが自衛策を講じるしかないのです。
例えば大手創作物投稿サイトでは、AI生成画像の投稿を制限するなどの対策を明言し、明確に利用規約やガイドライン内に定めました(2023年5月)。同サイトで作品を投稿していたクリエイターたちが声をあげ、実際に行動を起こした結果だったようです。
参考記事:AIが作ったイラスト、「投稿禁止」の動きも 著作権以外のリスクは(朝日新聞デジタル 様)
※情報は2023年5月時点のものです。全文を読むには有料会員登録が必要です。
先ほどの作例で使用した画像生成AI「Adobe Firefly」も、この問題についてしっかり考えています。まだ開発段階(2023年6月時点)ではありますが、学習元がどこかを明確にする・コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)をはじめとしたデジタルコンテンツを守る活動に参加する・特定のプロンプト(画像生成時に入力するテキスト)を拒否し不適切な画像生成を防ぐ、などの対策をしており、誰もが安心して利用できるような配慮が伺えます。流石、商用利用可能な画像生成AIを目指しているだけのことはありますね。
参考サイト:Adobe Firefly
※情報は2023年6月時点のものです。内容は更新されている場合があります。
【私と画像生成AIの付き合い方 3つのマナー】
最後に、私自身がAI生成画像を取り扱う際に気をつけている心がけを3つ、ご紹介したいと思います。といっても、まだAIを使った作品はそんなに作ってみていないのですが…。
その1:画像生成AIで描いた事をはっきり伝える
最も基本的なことですが、何らかの形で公に生成画像を公開する際「この絵はAIで描いたよ!」「絵の一部にだけAIを使っているよ!」など、誰にでも分かるように書き添えています。
だって悪意がない使い方をしているなら、AI生成であることを隠す理由なんてないですしね。むしろ書いたほうがウケがいいのでは? と思います。
その2:どの画像生成AIサービスを使用したかも書き添える
再三のことですが、画像生成AIを使う以上、予期せぬ学習元から知らず「盗作」が生まれてしまう危険性があります。少なくとも、その危険性を前提として利用すべきと思います。そしていざ問題が起きた時、まず気になるのは「原因」です。
「このソフトを使い、このように作った」というメモを残しておいたり、生成画像に書き添えておけば、原因究明の助けになると思います。AIの製作者に問い合わせて調べたり、プログラムの修正をお願いできるかもしれないからです。AI自体の改善のためにも、できる限りそういった情報は公開するのが良いかと思います。
その3:いちクリエイターとして「自覚を持った行動」をする
画像生成AIだって、数あるひとつの「描画ツール」に過ぎません。描くのはAIですが、それを指示したのは紛れもなく自分自身。AIを使おうが使うまいが、それ以前に自分はひとりの「クリエイター(創作者)」なのです。それを忘れてはなりません。
自分がされて嫌なことはしない。そのつもりがなくても、疑わしいことをしていたなら素直に謝る。事実を正直に話す。何より、作者と作品に敬意を払う。人として当たり前の気持ちを忘れなければ大丈夫。私はそう信じています。
その4:「楽しむ気持ち」を忘れない!
最後におまけの、4つめのマナー。それは「画像生成AIを全力で楽しめ!」ということ!
ここまで散々「問題点」やら「危険性」やらの話をしてしまいましたが、真に話したかったことはこの一言に尽きます。自分の中にはないさまざまなアイデアも、AIの力を借りれば無限に広げていくことができます。時には予想もしない結果にクスリときたり。「AIは悪」と決めつけるのは簡単ですが、まずは創ることを「純粋に楽しむ」気持ちを持って欲しいな、と思います。
SNSなどに投稿するなら、是非とも「#AIalt」「#AIイラスト」などのハッシュタグを活用しましょう。同じようにAIを使った作品を作っている人・探している人から反応があったり、思わぬ出会いがあるかも。
むかし誰かが言いました。「なんとかとハサミは使いよう」と。せっかくこんなに面白くて便利な技術が生まれたのですから、みんなで盛り上げて、時には議論しつつ、良い方向に発展させていきたいですよね!
【まとめ】
ということで、画像生成AIについての個人的見解でした。
次回のブログネタは一応決めているのですが、どんな形でお話するかはまだ検討中です。まあいつも通り、あんまり期待せずにお待ちいただければな〜、なんて…。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
それでは、次回をお楽しみに!
※本文中画像の一部はいらすとや様からお借りしております。
2023.6.27
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