制作チーム「アトリエ∞(インフィニティー)」所属、グラフィックデザイナーのwachico.(わちこ)です。
今回の「おつD」は実践メイン回。PhotoshopをPhotoshopたらしめているといってもいい程には代表的な要素、「選択範囲」についてです!
ある程度デジタル画像知識・Webデザインの基礎があって「Photoshopって何処から手をつければいいんだあああああ!?」……って初心者の方は、まず選択範囲を学ぶべし! ……たぶん!(オイ) っていうノリの回だと思っていただければ。
ちょっぴり事前知識前提(操作画面の構造や代表的なツール・パネル名程度が分かればOK)の、いつもよりちょっと難しめの内容ですが頑張りましょう!
※これらの情報は2025年6月時点、Photoshop CC 2025(MacOS版) を基準としています。
今回の参考書(あると理解しやすいです)
ACA アドビ認定アソシエイト対応 Photoshop CC 試験対策
※上記は旧名称・旧式試験の対策テキストです。
(2026年6月時点の公式テキストはこちら)
現行試験とは出題範囲・内容が多少異なる場合がありますのでご注意ください。
※ちなみに資格試験そのものについては、こちらの記事でどうぞ。
もくじ
【入門編:選択範囲って何?】
【基本編:選択範囲を作ってみよう!】
【実践編:選択範囲で写真加工をやってみよう!】
【上級編:いくつ知ってる? 選択範囲のつくりかた】
【まとめ】
【入門編:選択範囲って何?】

先ほども言った通り選択範囲とは、Photoshopを象徴すると言ってもいい機能のひとつです。
Photoshopの操作というのは、基本的に「どこを」「どうする」という2つの要素でだいたい説明がつきます。選択範囲というのは、この「どこを」を決める役割を担うものですね。
具体的にはアートボード(画像)の一部をドラッグする、色や形状などの共通したパラメータを抽出する、ブラシで塗りつぶす、その他専用のツールで線を描いて囲う……などなど様々な方法で、特定の部分にだけ変更を加えられるようにします。
「この部分にだけ別の画像を差し替えたいなー」とか、「この部分だけ色調補正(明暗や色相・彩度など色の要素を調整すること)したいなー」とか、「ここだけ誤って削除するのを防ぎたいなー」って時は、まず選択範囲で該当部分を指定するのが鉄則なのです!

点線で囲まれている範囲しか塗れていないことがわかります。
(詳しくは後述しますが)今は簡単に複雑な形の選択範囲を作れる豊富なツールが実装されていますし、各ツールを対象や目的によって使い分けたり、組み合わせたりして選択範囲を細かくコントロールしやすくなっています。様々なツールを駆使し、効率よく正確な選択範囲を作れるようになることは、Photoshopをマスターする最初の課題と言えるかもしれません。
また昨今は生成AIの登場・発展によって、画像補正の幅もかなり広がりました。この生成AIに関連する機能でも選択範囲を使いますので、また後ほどご紹介しますね。
【基本編:選択範囲を作ってみよう!】
では最初に、ごく簡単な選択範囲の作り方から!
長方形/楕円形選択ツール:長方形や楕円形の形状で選択範囲を作る

画像の中に長方形や楕円形(正方形や正円も可)の選択範囲を作ります。実務の中で使用する場面は少ない方かもしれませんが、その分単純なことしかしないので、選択範囲の仕組みを理解するのには丁度いいです。
まずは下準備として「ファイル」→「新規」から適当なサイズのファイルを開くか、適当な画像(JPGやPNGなど)を開きましょう。次に「長方形選択ツール」か「楕円形選択ツール」を選んで好きな場所をドラッグすると、その範囲が動く点線で囲まれます。この点線の内側が、選択範囲です。
選択範囲を指定できたらバケツツールで塗り潰してみたり、色調補正をかけてみたり、フィルターを適用してみたり……と、色々編集を加えてみてください。選択範囲の内側にしか編集が効かないのがわかると思います。また、画面上部のメニュー(Macだとリンゴマークの右横一列に並んでいる項目のこと)から「選択範囲」→「選択範囲を反転」を選ぶと、選択されている部分・していない部分が逆転します。
もしもうまくいかない時は、選択しているレイヤーに鍵マークが付いていないか確認してください。鍵マークをクリックして外せば、画像が編集できるようになりますよ。

また「コンテキストタスクバー(必要に応じて項目が変わる横長のメニュー)」右端に出ている「選択を解除」を押せば、いらなくなった選択範囲を消すことができます。その他にもこの時のコンテキストタスクバーには、選択範囲を調整する様々な項目が表示されているのですが……長くなるので今回は割愛。
【実践編:選択範囲で写真加工をやってみよう!】
では早速ですが実践パートと参りましょう! ここでは予め作っておいた選択範囲を利用して、背景を別の画像に差し替える、という簡単な画像合成をやってみますよ〜。

この画像では既にチューリップに選択範囲が作成してあるので、まず「チューリップ」から「チューリップの背景になる領域」に選択範囲を変更する必要があります。「選択範囲」→「選択範囲を反転」と進んでクリック・またはコンテキストタスクバーの「選択範囲を反転」アイコンをクリックします。
これで背景になる範囲(チューリップ以外の範囲)が選択できました。この「選択範囲を反転」は割と便利なコマンドなので、選択範囲の作成とセットで覚えておきましょう。
ここまでできたら、選択範囲内をdeleteキーや消しゴムツールなどで全て削除します。削除したら選択範囲は解除して、画像全体が編集できる状態に戻しておきましょう。これから、この削除した領域(正確には背後のレイヤー)に、別の画像を配置して合成します。

別の画像(写真)をアートボード(画像)の上にドラッグ&ドロップして、新しいレイヤー(目に見えないアニメのセル画のようなもの)として位置を合わせて配置します。このレイヤーをレイヤーパネルの一番下にドラッグ&ドロップで移動させると、先ほど削除した部分に配置した画像(レイヤー)が見えるようになります。これが、レイヤー構造の基本的な仕組みになります。
ここから更に色調補正(色相や彩度などのコントロール)やフィルター(ぼかしやモザイク・キャンバス画のようなタッチにする……などの様々な加工処理)などを駆使して、理想のイメージに近づけていき、好きなように自分なりのアレンジを加えていきます。

あとは「Web用に保存」などを使って、使用用途に適した形式に書き出し(データの形式を変えた複製を保存すること)すれば完了!
いかがだったでしょうか。これが、選択範囲の基本的な使い方です。
【上級編:いくつ知ってる? 選択範囲のつくりかた】
そんな選択範囲を作る方法は、前述通りひとつではありません。ツールや機能が沢山あるぶん、様々なアプローチ方法があり、その組み合わせも無限大。
ということでここからは私が普段から愛用している、選択範囲に関係するツール・機能を厳選してご紹介致しましょう! 沢山あるんでここから一気にいきますよー!
オブジェクト選択ツール:特定の「被写体だけ」を選択する

明確に「背景」と「被写体」に分かれていると判別しやすい画像(ブルーバックやグリーンバック画像でなくても、テーブルに物が置いてある写真とかでも可)の場合、まず「オブジェクト選択ツール」を試すのが早いです。

今やたったのワンクリック、だと……!?
被写体をクリックして選択範囲を作り、「選択範囲を反転」して削除。たったこれだけで、上のようにごく簡単に、複雑な被写体の切り抜きだってできてしまいます。
勿論私が学生の頃はこんなツール無かったので、手作業でちびちびと細かに選択範囲を作るのがもう時間と手間がかかるのなんのって……。それが今やワンクリックでいけるとは。画像認識技術が飛躍的に発展したお陰でしょうね。ありがたいことです!
ただしこれも完璧ではなく、細かいところが抜けたり余ったりする場合もあります。うまくいかない時は、他のツールも組み合わせて微調整しましょう。ロゴやイラストの背景透過画像を作る時にも活用しやすいツールなので、画像の特徴を見極めながら使い分けるといいですね。
自動選択ツール:クリックしたピクセルの「近似色」を選択する

クリックしたピクセル(画像を構成する点)の色情報を読み取り、それと近似した色をすべて選択するツール。ショートカットキーと組み合わせると、選択範囲を広げたり狭めたりもできます。けっこう昔からある、「選択範囲といえばコレ!(私見)」的なツールです。

許容量を小さい値にすればするほど、ほぼ同じ色しか選択しなくなる。
近似色の匙加減については、主に画面上部の「許容値」パラメータで細かくコントロールします。基本的に画像全体を対象に選択しますが、あらかじめ「隣接」にチェックを入れておけば、クリックしたピクセルを基準に「隣接(隣り合った)ピクセルだけ」を対象に、かつ許容値の条件を満たす選択範囲を作ることもできます。
前述通り私は使い馴染みがあるので、幅広い選択範囲ツールが増えた今もなお、基本の選択範囲作成ツールとして愛用しています。色数が少なく、単色で塗り潰された部分が多い画像、例えばアニメ的なイラストなんかに向いているかもしれませんね。
パラメータの塩梅が難しい所はありますが、自分にとって使い心地のよい値に調節できると途端に汎用性が高いツールに化けます。頑張って試行錯誤して、理想のツールに変身させましょう!
色域指定:特定の「色域」だけを選択する

自動選択ツールと少し似ているのが「色域指定」という機能です。画像の中でどこに分布する色かわからなくても、とにかく「特定の色」だけを一括で選択したい時などにオススメです。ツールパネルではなく、上のメニューバーにある「選択範囲」→「色域指定…」と選択すると出てきます。

「選択:指定色域」に設定したら、選択したい色の部分をクリックします。これで選択したピクセルと同色、及び許容量までのピクセルを、ワンクリックで選択することができます。あとは許容量のスライダーを調節して、丁度いい選択範囲に変更しましょう。他にも色々とオプションを駆使すれば、より細やかな色域選択も可能ですが、とりあえず最初はこの方法だけ覚えれば十分です。


指定した色と許容量に合わせて自動的に選択範囲を抽出してくれるので、はっきり境目がある色は勿論、ぼかしやグラデーションのある色に対しても幅広く使いやすいと思います。例えば「空の青い部分だけ選びたいなぁ」とか、画像全体から特定色の分布をチェックする……といった変則的な使い方もできますね。
選択ブラシツール:ブラシで塗りつぶして選択範囲を作る
「選択ブラシツール」は、文字通りブラシのように、フリーハンドで塗りつぶす線を描いた所がそのまま選択範囲になる、というもの。「ブラシツール」や「鉛筆ツール」と同じように太さや硬さを細かくパラメータ調整でき、一度描いた線を消す(optionキー/Altキーを押しながら描く)こともできます。まるでお絵描きのように、非常に直感的に選択範囲が作れるツールです。
他のツールなどで大雑把に作った選択範囲を、このツールで微調整する……といったこともできますので、選択範囲の仕上げ工程にも使いやすいと思います。先述通りブラシや鉛筆と同じようなツールなので、欲を言えばタブレット端末(ペンタブレット・液晶タブレットなど)があると扱いやすいでしょう。

※ベースとなったプロンプトはALTテキストに記載
ところでこちらは、4月投稿のブログにて画像生成AIの試行錯誤中に生まれた、架空キャラクターのボツ画像です。
該当記事(このボツ画像は載ってません)
これを使い回s……有効活用して、選択ブラシツールの活用例をひとつやってみます。
まずは画面左上部に表示されている、太さや硬さなどのパラメータを適切な値に調整します。今回は不透明度・硬さの数値をそれぞれ100%……つまりくっきりした線に近いブラシで描いていますが、これらの数値を弄れば半透明の選択範囲や、輪郭がぼんやりした(ボカシの入った)選択範囲を作ることもできますよ。

塗りつぶしたところ(画像では水色)=選択範囲になる。
瞳の部分を上からなぞると、ある一色で塗り潰されます。この色は「どの部分が選択範囲になっているか」を示すものなので、アートボードや画像自体に影響することはありません。もしこの色が見難い場合は、ブラシの太さを選ぶアイコン横にある歯車アイコンから他の色を選べるので、見やすいものに変更しましょう。

同じようにもう一方の瞳も塗りつぶして選択したら「イメージ」→「色調補正」→「色相・彩度」でパラメータを色々弄ってみます。下の動画を見ると、選択した瞳の部分だけ色が変わっているのがわかりますね。




瞳の色を変えるだけで、結構イメージが変わりますね。
このように、特定部分のカラーバリエーションを作るのにも選択範囲は便利です。例えば瞳を片方ずつ選択→色調補正すれば、より細かく色を調整できますね。

更に、これまでに紹介したような複数の選択範囲ツールを使いこなせると、こんな感じに複雑な形状でもある程度楽に作れるようになってきます。


試しにこの複数のツールで作った選択範囲(髪の部分)だけを利用して、キャラ全体の色彩もガラリと変えてみました。左が元画像・右が画像加工後。同じ絵なのに、色味が違うだけでまったく別の絵みたいになるのが面白いですね!
レタッチや描画表現の幅がグッと広がるので、慣れてきたら是非チャレンジしてみましょう!
■応用編:生成塗りつぶし機能と選択範囲
昨今はスマホでもできる、生成AIを駆使して「画像の中の不要な部分を削除する」といった機能。勿論、Photoshopでも同じようなことができます。それが「生成塗りつぶし」機能です。
画像生成AIを利用して選択範囲内の物を削除するだけでなく、簡単なプロンプト(命令文)入力だけで、そこに無い物を描かせることだってできちゃいます。応用編ではこの機能を使って、写真に写った人物を自然な形で削除しましょう。
とはいえ、やり方はとても簡単。まず何らかのツールで人物を囲うような選択範囲を作ります。この時の選択範囲は、精密に削除する物と同じ形状にしなくても構いません。むしろ周囲の要素(背景)を少し含めて大まかに選択範囲を作る方が、より自然な生成ができるかと思います。

そうしたら、コンテキストタスクバーにある「生成塗りつぶし」をクリックします。するとプロンプトを入力できるテキスト入力欄が出てきますが、今は何も入力せず「生成」をクリック。

すると「生成レイヤー」が自動的に追加され、そのレイヤーに選択範囲内の被写体を自然な形で削除した画像を生成してくれます(インターネット環境が必要なのでそこはご注意をば)。

「プロパティ」パネルには、プロンプトの内容と生成された画像のバリエーションが並んでいるので、結果がよくない場合はそこから再度「生成」をクリックしたり、プロンプトを追記・変更してみましょう。


作例ではこんな感じで、一発でキレイに人物の部分だけ削除することができました。
選択範囲に慣れてきた人向けオマケ情報 ※クリックで展開

Photoshopでは基本的に、現在選択しているレイヤーにしか編集を加えることができません。他のレイヤーも含めて変更を加えたい時は、画面上部にあるチェックボックスから切り替えることができます。
ただ基本的にチェックは外したままのほうが「違うレイヤーにも変更を加えちゃった!」といった事故を未然に防げますので、必要な時だけチェックを入れるようにしましょう。
「操作がうまくいかないな?」と思ったら、既に不要な選択範囲が出来ていないか・レイヤーパネルで選択しているレイヤーや選択範囲は正しいか・「全てのレイヤー」や「全レイヤーを対象」のチェックボックスのON/OFF状態……などを確認してみましょう。
【まとめ】
ということで以上、選択範囲の作り方を怒涛の如くお届け致しました。
今回はかなりガッツリな実践講座になってしまいましたね。ここまで読んでくださった方、本当にお疲れ様でした! 書く方も書く方でどんな項目に触れるか・省くか、どんな画像を載せればいいのか……めちゃくちゃ考えることが多かったです。とにかく疲れたあぁぁぁ……!
さて次回は、PhotoshopとくればIllustrator! ということで、何かしらIllustratorの入門講座的なことを書けたら丁度いいかも? と考えております。何か思いついて全然全く違うことをやるかもしれませんが。まあつまるところいつも通り「未定」です!!(怒られろ)
繰り返しになりますが今回は実践講座でしたので、もし「こういう時どうするの?」「コレの使い方詳しく知りたい!」などなどご質問・また誤った情報などございましたら、遠慮なくお気軽にコメント下さい。返信はゆっくりにはなりますが、自分に分かる範囲でお返事します。もしかしたら、ブログのネタとして採用するやも?
ここまでお読み頂きありがとうございました。
それでは、次回をお楽しみに!
※当記事中の一部画像には、商用利用可能な生成AI技術を用いています。
※当記事の一部画像には「ChatGPT(DALL-E3)」によってAI画像生成した物が含まれます。なお該当画像のALTテキストには、可能な限り生成時のプロンプトを併記します。
※当記事の一部画像には、無断転載や不正なAI学習を抑制するウォーターマーク、及び「Glaze」による特殊な画像加工を施しています。詳細については以下をご覧下さい(英文表記)。
2025.6.30
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