パッケージデザインのおつまみ。|三つ星マインド アロマキャンドルセット編 <2>

おつまみでざいん。

制作チーム「アトリエ∞(インフィニティー)」所属、グラフィックデザイナーのwachico.(わちこ)です。

今回の「おつD」は前回の続き、アロマキャンドルのパッケージデザイン面について、いよいよお話していきます! 大変お待たせいたしました…。

三つ星マインド アロマキャンドルセット 写真

三つ星マインド アロマキャンドル キャンドル 3個セット(Amazon)

ちなみに初手からいきなり具体的な内容に入っていきます。この方針に至るまでの企画経緯諸々はバッサリ省いてありますので、もし前回をご覧になっていない方は前回の投稿を先に読んでおく事をお勧めします。

パッケージデザインのおつまみ。|三つ星マインド アロマキャンドルセット編 <1>


もくじ

【コンセプト編:「ストレス社会のビジネスパーソン」って、誰?】
【ラフデザイン編:理想の「ハコ」をさがして…】
【グラフィック編:誰かに「贈りたい」と思わせる仕掛け】
【入稿データ編:思わぬ罠? 「ことば」の壁を超えろ!】
【まとめ】


【コンセプト編:「ストレス社会のビジネスパーソン」って、誰?】

おさらいになりますが、商品コンセプトとして上がったキーワードは「ストレス社会のビジネスパーソン」。働く人に贈る癒しのギフト、という商品の方向性は定まりましたが、個人的な感覚からすると、まだコンセプトとしては軸が弱い気もしていました。

コンセプトを絞らないスタイルは、あらゆるターゲットに刺さる可能性を広げてくれますが、同時に商品としての「個性」が出ない、という結果にもなりやすいです。この商品はブランドオリジナル商品第一号として、顧客に強い印象を残し「三つ星マインド」の名前を覚えてもらう…という大事な役割がありました。そのため、より具体的な客層・購買動機・使用シーン等をイメージしながら、自分なりにコンセプトをブラッシュアップしていく感じで進めていきました。

三つ星マインド アロマキャンドルセット 企画会議プレゼン資料から抜粋 商品企画コンセプトとターゲットについて
企画会議プレゼン資料から抜粋

加えて「贈られる側」だけでなく「贈る側」の視点にも着目してみました。「ストレス社会のビジネスパーソン」だけでは、性別や年齢層について想起させる要素はそんなにありません。だからこそ「ユニセックス」で「特定の年代を感じさせない」デザインであるほうが、あらゆる層にとって贈り物にしやすく、あるいは自分へのプレゼントとしても選んでもらいやすいのではないか。「あえて絞らず、幅広い層にヒットさせる」という全体的なデザイン方針は、これらのアイデアから少しづつ固めていったように思います。

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【ラフデザイン編:理想の「ハコ」をさがして…】
三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン ラフ案段階の箱 展開図
ラフ案段階の箱 展開図
三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン ラフ案段階のゲス(上げ底のような部品) 展開図
ラフ案段階のゲス(上げ底のような部品) 展開図

取扱商品が決まった後、話し合いは「パッケージ(梱包材)をどのように調達・デザインするか?」へと進みました。販売されている既製品から選ぶ案・箱自体の設計からデザインし印刷会社に発注する案。印刷要素は箱自体かスリーブかラベルか…。その検討中に描いたひとつが、この展開図です。これは実際に印刷して組み立て、適切な箱の形式やサイズ感の参考として活用されました。

紆余曲折を経て、最終的に「きちんと自前で検品をする」という前提のもと、商品の仕入れ元で用意してある既存の箱・ラベルにデザインを刷り、それを組み立て・箱詰めして納品頂く方法に決まります。と言うのも、実は同様の競合商品には既に検品が甘いものが散見されており、通販サイトのユーザーレビューにも「箱に破れやシミがある」「キャンドルのグラスが割れている」といったコメントや画像が数多く寄せられていたからです。残念ながら海外から品物を買い付ける場合、輸送中の事故などで、そういった不良品は少なからず発生してしまうようなのです。

ですがこちらには、検品する人員もノウハウもあります。納品時点で予め良品・不良品を選別できれば、きちんとした商品を安全にお客様の元までお届けできる自信がありました。さらに外箱の不良で余ってしまうキャンドルも、箱なしの「B品」として売り出せる。多少のロスは覚悟しても、持てる武器を総動員することで、これらの懸念事項をペイできると判断したわけですね。

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【グラフィック編:誰かに「贈りたい」と思わせる仕掛け】

コンセプトが定まり、箱の仕様も決定。ここまで来れば、いよいよパッケージデザイナーの本領発揮というところ。まずは箱全体を覆うパターン(柄)のラフ案から。

三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン 外箱パターン案出しラフ
外箱パターン案出しラフ

男女問わず合わせやすい色・高級感を感じさせる色として、メインカラーは紫系に。チェックやダイヤなど、オーソドックスなパターンを多めに出しています。こうして振り返ってみると、初期ラフ段階では採用パターンをまだ思いついていないんですよね。半分遊び心でブランドロゴを用いた柄も作ったり。決してウケが良くなかったということはないのですが、金箔押しを入れる関係で、バランスをとるためにもあえて主張し過ぎない、いい意味で無難な柄へと方向を絞っていきました。

三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン 採用ラフ案
採用ラフ案

採用柄の初期版がこちら。箔載せを意識してか、この段階では現物よりも若干暗めというか、彩度(鮮やかさ)が抑えめになっているのが分かります。これは箔の色味や輝きの感じを踏まえて、今くらいの色味に調整していった感じでした。

この箱を組み立てると、蓋を閉めた状態では「三つ星マインド〜…」の文字が隠れて見えなくなります。一応、両サイドにもアルファベットで書いてはありますが、ユーザーに読ませる意図はあまりなく、単なる「装飾」という程度のものです。実はコレ、ぱっと見でブランド名が分からないよう、意図的にこうデザインしているのです。

三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン 蓋を上げた状態(キャンドル入り)
蓋を上げた状態(キャンドル入り)
三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン 蓋を上げた状態(正面拡大)
蓋を上げた状態(正面拡大)

「まずブランド名を印象付ける」という販売目的からすると、まったく逆のことをしているようにも思われるかもしれません。が、こうすることで「蓋を開ける時、ブランド名が必ず目に入る」ようにもなっています。ギフトという商品役割的に、有名ブランドならいざ知らず、デカデカと無名ブランドの名前が箔で押されていると、どうにも野暮ったく見えてしまう。でも、何とかパッケージでブランド名を印象付けたい…、という問題を解決する秘策! 開けた時にはばっちり名前が見えるよう、ご覧の通り「デカデカと」入れておりますよ。

三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン 決定稿ラベルデザイン
決定稿ラベルデザイン

キャンドル側面に貼るラベルについては、最初は色々凝ったデザインを考えていたのですが、やりすぎるとギフト全体の落ち着いた雰囲気を壊すような気がしたので方針転換。極力蝋の色に馴染むようにしたくて、あまり深く考えず、必要な要素を必要な分だけシンプルにまとめました。ただ、外枠の太さについてはメンバー内でも議論が難航し、実際にサンプルを刷って頂いて比較しながら、丁度いいバランスに落とし込めるよう努めました。

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【入稿データ編:思わぬ罠? 「ことば」の壁を超えろ!】

パッケージ・ラベル共にデザインが確定したら、デザイナーは「入稿データ」の準備に入ります。「入稿データ」とは出版社や印刷会社などで、実際に印刷工程で使用するためのデータのこと。デザインを作っている最中の「作業データ」とは違い、容量を軽くしたり、印刷に耐える画質を保ったり、入稿先のソフトやハード(コンピューターや印刷機など)で扱えるファイル形式にしたり…と、作業データとはまた違った面で、気をつけるべきことが沢山あります。

大抵の場合、入稿データを受け付ける会社が「テンプレート」というひな形のファイルを用意してくれています。デザイナーはそのファイルとデータ作成時の注意事項をチェックして、ファイルの中に作業データを組み込んで入稿データ化する…というのがお決まりのパターンです。今回も普段通り、先方から頂いたファイルに作業データを配置して、入稿データとして納品しました。

ところが、ここでとある問題が発生。テンプレートだと思っていたファイルが、実はテンプレートではなかったのです! やっと納品できたデータを差し戻されてしまい、物販チームは勿論大慌て。……ですが、本音を言うと(物販の皆様にはちょっと言いづらいのですが…)私はほぼこうなるだろう事をわかっていました。頂いていたファイルが、(ピクセル数や画質の点で)一般的な業務用印刷に耐えうる仕様ではなかったからです。十中八九発生するだろうアクシデントに備え、後から容易に差し替えられるような作業データ作りを意識してさえいました。

今回は、日本と海外で通訳を通しながらやり取りしている関係上、些細な言葉のニュアンスが伝わりきらなかったり、誤った情報として受け取ったりしたために起きたものでした。バイリンガルやネイティブの職員・メンバーがいるわけでもない環境では、防ごうと思って防げるものではなかったと思います。ですがまあ何と言いますか…こういった入稿時のトラブルって、普段でもそう珍しいものではないと思っていたり。本当に些細なことで、ちょくちょく再入稿事案は発生するんですよね。……まあ、うん、一旦、悲しくは、なりますけど、はい…(笑)

そんなわけでテンプレートを送り直してもらい、無事に入稿は完了。パッケージデザイナーとしての仕事は概ねここまで。あとはサンプルを確認(今回は映像・写真を介したチェックでした)して、問題があればその対応にあたるという流れになります。

三つ星マインド アロマキャンドルセット パッケージデザイン サンキューカードの表面
サンキューカードの表面

ちなみにサンキューカードについては、国内の印刷会社に別発注しています。こういった変形サイズ(A4・B5といった規格サイズではないもの)の印刷物は、印刷会社に断裁してもらうとコストがかさみがち。そこで一旦定型のはがきサイズに刷ってもらったものを、こちらで1枚ずつ手作業でカット・箱詰めして仕上げています。人員が割けるからこその小技ですね。

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【まとめ】

2回にわたってお送りしましたパッケージデザイン編、いかがでしたでしょうか。なるべく専門用語を少なめに、易しい書き方を目指してはいるんですが、やはり深く突っ込んだ話題をやろうとするとどうにもままなりませんね…むむ、精進せねば。

なお、都合上載せきれなかったラフデザインなどの画像は、制作(デザイン)部門サイト「アトリエ∞」にて公開しております。お時間ありましたらこちらも是非ご覧くださいませ!

アトリエ∞ 公式ホームページ(外部リンク)
 三つ星マインド オリジナルアロマキャンドルセット(企画・パッケージ)

ここまでお読み頂きありがとうございました。

それでは、次回をお楽しみに!

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※当記事中の一部画像には、商用利用可能な生成AI技術を用いて加工を加えています。詳しくはAdobeの生成AIについてをご覧下さい。

※画像お借りしました:いらすとや

2023.10.27

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